2017年2月7日火曜日

既存株主のご退場(追い出し)に関して

1年半ぶり2度目の登場、インターンの山本です。
前回(http://intern.codawari.co.jp/2015/06/20150531.html)はイベントのご紹介でしたが、本稿では少し真面目に、「スクイーズ・アウト(Squeeze Out)」という手法について述べたいと思います。

事の経緯は、社長より「少数株主を追い出す方法があるらしいので、それに関して分かり易く教えて」という無茶振りがありました。別にも手法があるのですが、今回は「スクイーズ・アウト」にフォーカスを当てました。


そもそも、「スクイーズ・アウト」とは何か。
直訳すると「締め出す」という意味ですが、ビジネスの文脈においては下記のような意味になります。
スクイーズ・アウトとは、「支配株主が少数株主にその保有する株式の売り渡しを請求できる権利を認める制度」のことです。
(参考:http://ma.mgrp.jp/dictionary/131


より噛み砕いて言えば、少数株主の株式を強制的に買い取って(少数株主を締め出して)特定の株主のみを会社の株主とすることを指します。
以下では、何のために行うのか、実務上ではどのように行うのか、どのようなリスクがあるのかについて記述したいと思います。

「スクイーズ・アウト」は何のために行うのか
上述の通り、スクイーズ・アウトによって、分散した株式を集約させたり、少数株主から株式を取得したりすることが可能になるのですが、その必要性が生じるケースとして下記のようなものが考えられます。
・事業継承、M&Aにより会社の100%支配権を移転したい。
・支配権を強化して会社の意思決定を迅速化したい。
・安定的経営の支障となる対立的な株主を排除したい。
・連結納税、グループ法人課税などのタックスメリットを享受したい。など
このような目的のためにスクイーズ・アウトが実行されるようです。

「スクイーズ・アウト」はどのように行うのか
スクイーズ・アウトの手法について述べる前に、分散株式を集約したり、少数株主から株式を取得したりする方法全般について確認したいと思います。
その方法は大きく2つあり、一つは任意の買い取り、もう一つがスクイーズ・アウトとなります。上述の通り、スクイーズ・アウトは、少数株主から強制的に(個別の承認を得ることなく)株式を取得する方法です。なので、実務上では一般的に、まずは任意買取りの交渉を行い、それでも買い取ることができない場合にスクイーズ・アウトを行うという手順を踏みます。
平成27年施行の会社法改正以後のスクイーズ・アウトの主な手法は下記の2つです。
一つは「特別支配株主の株式等売渡請求制度」、もう一つは、「株式併合スキーム」です。これらについての詳述は紙幅の都合上、割愛させていただきます。(気になった方は調べてみてください。少数株式の定義もこれら方式によって違うので注意が必要です。)

「スクイーズ・アウト」のリスク
「強制的に買い取る」と聞くと、何やら危険な臭いがしませんか。
上述の通り、法的に認められた手段ではありますが、リスクは存在します。
実行側の企業にとっての主なリスクの一つとして、少数株主が買い取り価格に不満を呈することが挙げられます。
少数株主は強制買い取り価格に不満があれば、裁判所に価格決定の申し立てをすることにより、株式の買い取り価格を判断してもらうことができます。
実際、株価に異議を唱えた少数株主と株価争いになり、裁判で価格決定することになった事例も存在します。


本調査の学び
私としては、今回の調査で再認識したことが二つあります。
一つは、目的達成のための手段(今回でいえばスクイーズ・アウト)やその背景にある法を十分に理解することが非常に重要であるということです。
もう一つは、とはいえ手段はあくまでも手段なので、それらのメリット・デメリットを十分に比較し、目的から視点を離さない姿勢が必要であるということです。
正直なところ、学生目線からいえば、会社法などの知識の習得はいかにも難しそうで回避したいと思いがちですが、目的達成のための手段と捉えることで、前向きに取り組んでいきたいと思いました。



慶應義塾大学4年(と名乗れるのもあとわずか) 山本隆弘